こんにちは。生涯学習支援カルチャースクール『エデュカーレ』代表の白石です。
今回は想像力養成シリーズの最終回、数論理の重要性についての情報を発信していければと思います。
数、といわれると、「私、算数苦手だから」「数を見ると頭が痛くなる」といった方も多いのではないでしょうか。
かくいう私も算数が非常に苦手で、大学受験もできるだけ数に触れないような受験科目を選んでいたので、そういった方の気持ちが非常にわかります。
ただ、こういった業界に入り、幼児教育においての算数の役割に触れることで、それまでの数に対して抱いていた印象が大きく変わりました。
今回は、算数嫌いになるメカニズム、算数と想像力養成の関係、数を数量としてとらえてもらうためのエデュカーレの取り組み、この3つについて情報を発信できればと思います。
目次
1.最初はみんな、算数が好き!?算数嫌いになるメカニズム
(出典:算数「好き」は小4から減少…ベネッセ調べ「ReseEd」)
ベネッセ教育総合研究所が行った、小学生対象の「算数が好きかに関する意識調査」で、学年別で「算数が好き」と答えた割合は1年生が82.5%ともっとも高い値を示していました。
算数、数学嫌いの方に、よく思い出していただきたいのですが、小学校1年生の時から、果たして算数が嫌いだったでしょうか。
おそらく最初から嫌いだったと答える人は少ないように思います。理屈が簡単な小学校1年生のころであれば、どんどん自分で問題を解く事ができる楽しさのおかげで、むしろ好きだった人もいたのではないでしょうか。
ベネッセの調査では、学年が上がるごとにどんどん「算数が嫌い」と答える割合は増えています。大体、小学校6年生の時には、「算数が好き」と答える割合は約60%ほどになってしまいます。
これは、学年が上がって、理解しないといけない理屈が難しくなったからそうなってしまったのでしょうか。確かにその要素も多少あるとは思いますが、それだけではないのではないかと私は考えています。
「算数が嫌い」と答える割合が大幅に増えるタイミングは、小学校4年生にきています。
ここで習う主な単元は、主に二桁の掛け算、割り算、万以上の数認知、概数、小数といったものになります。
これらが分からなくなる原因がまさに、数を数量としてとらえる力、数論理力をそれまでの算数の時間で培うことができなかったことが大きく影響していると私は考えています。
数論理とは、簡単に言えば、数を物体的なイメージで捉えられているかということです。
つまり、文字として1、2,3という数字をとらえるか、1、2、3という数字を見たときに頭の中で、具体的な量としてイメージできるかというのは大きな違いになります。
掛け算の九九教育が一番たとえとして分かりやすいのですが、掛け算九九はまさに数字を文字として捉えて考えるテクニックになります。皆さんも歴史の年号を覚えるように繰り返し繰り返し、九九を呪文のように唱えて掛け算を学習したのではないでしょうか。
掛け算九九は計算速度を上げるために、必ず習得しないといけないテクニックではあるので、学校教育では、どうしても、掛け算九九を子どもに習得させるのが主目的になってしまいがちになります。
しかし、実は、掛け算は九九など使わなくてもそれまで学習した加法減法を上手に使って考えればかなりの桁数まで解くことができるのです。
掛け算の学習は、それまで学習してきた加法減法を応用して、自分なりの解き方を思索していく最高のタイミングのはずなのですが、学校の授業時間数ではそういった事を十分にできないまま九九教育優先で授業が進んでいってしまいます。
こういった事が積み重なることで、本来1年から3年までに培われるべき数量感覚が身につかず、そのあとの分数、小数などの数字の捉え方も曖昧になっていってしまうことで、上の学年の応用的単元がわからなくなってしまうというのが、算数が4年生あたりで嫌いな子が増える原因としてあるのではないかと考えています。
2.数論理と想像力養成の関係
算数教材は、想像力養成にもってこいの教材がそろっています。
数論理が、まさにそれで、逆に想像力が苦手な子は算数の計算も非常に苦労します。
エデュカーレでは、算数の計算学習をする際、数タイルという教具を用いるのですが、こういった形で数を量として捉えることで、頭の中で、その量が減ったか増えたかをイメージしていきます。
頭の中のタイルを、増やしたり、消したりといった移動を行う事で、前にもお話しした図形認知の力とも影響しあって、想像力が鍛えられていくのです。
また、数量をしっかりと理解できていることで、様々なことをイメージした際に、よりリアルな想像が可能となります。
例えば、時間や速度に関してのイメージがしっかりしていれば、遠くに出かける際に到着時間がどのくらいになるのかを予測し、だからこの位早くに出ないと間に合わないのでこう行動しよう、というように現実の行動指針を正確に決定できます。
こういった理由で、数論理が想像力養成と非常に関わりが深いということがわかっていただけるのではないでしょうか。
3.数を数量としてとらえてもらうためのエデュカーレの取り組み
<ブロックの数はいくつかな?>
こういった木のブロックをサイコロのように放り投げて、瞬時に何個かを当てるゲームをします。「いい?ぱっと見てすぐに答えるんだよ?」と言うと、3歳くらいのまだ低年齢の子でもじっとこちらの手元を凝視して、すぐ答えようと集中してくれます。こういった集中状態を作りながら、ブロックの数をひとつひとつ数えないで、全体を見て数をとらえる経験を積み重ねていくことで、自然と数論理能力が身についていきます。
<数タイル>
数タイルは、実際に数を視覚的にとらえることができる非常に優れた教具になります。繰り上がり、繰り下がりなどをシステム的なルールとして暗記するのではなく、視覚的な具体的イメージで考えられるようになることが非常に大切なので、こういった教具で実際に最初は目で見てもらい、段々と頭の中で同じように数タイルが動くところを想像してもらうことで数論理の能力が向上していきます。
4.さいごに
いかがだったでしょうか。想像力養成シリーズの最終回として、数論理能力についてでしたが、今までお伝えしてきた4つの力がバランスよく伸ばされることで、私が言っているいわゆる想像力が身についていくと考えております。
数論理に関しては、もちろん想像力養成に非常に関わりがあるから紹介しているのもあるのですが、個人的には、こういう風に最初から算数を習っていれば小学校から高校まで楽しく算数や数学を勉強できていたなぁという後悔もあったので、できるだけ多くの方に知ってもらえればという想いがあるので詳細に説明させていただきました。
ぜひ、読んでみてどんなものなのかご興味が出た際は、さらに詳しくカリキュラムについてご説明させていただきますので、お問い合わせ頂ければと思います。
次回は、もう一つエデュカーレが掲げるそうぞう力、創造力について詳しく紹介できればと思います。
<参考文献一覧>
渡辺恵津子(2015)『新いきいき算数1年の授業』 フォーラムA.
加藤久和(2015)『新いきいき算数1年の授業』 フォーラムA.
伊藤恭(2004)『心と能力が同時に育つ/本物の幼児教育』 株式会社ピグマリオン
遠山啓(1977)『水道方式の授業』国土社
遠山啓(1972)『算数はこわくないおかあさんのための水道方式入門』ほるぷ出版
長崎栄三・滝井章『算数の力数学的な考え方を残り超えて』東洋館出版社